最高裁判所第一小法廷 昭和26年(オ)19号 判決 1953年12月24日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人の上告理由は末尾に添えた別紙記載のとおりである。
第一点 本件上告人の請求は、要するに、被上告人等が原判決請求趣旨記載の各訴訟事件(以下単に別件と称する。)について、訴訟当事者高坂晃正(法定代理人親権者高坂文子)を代理すべき訴訟代理権を有しない旨の確認判決を求めるというのである。しかし、右別件においては、被上告人等は単なる訴訟代理人であり、上告人もまた第三者にすぎないことは上告人の主張自体に照らし明白である。したがつて、かりに本件で、右当事者間において、所論の如き代理権の存否につき確認判決をしてみても、該判決は、別件について裁判所および当事者を拘束する効力はないのである。訴訟代理権の有無の如きはそれが問題となる当該訴訟においてこれを審判すべきであり、またそれを以て足るのであつて、本件における右の如き確認判決は、なんら別件たる当該訴訟について所論訴訟代理権の存否を確定することを得ないのである。されば、かかる判決を求める上告人の本件請求は確認の利益を欠くことが明らかであつて、これを許容し得ないのは当然であるから、原判決が上告人の請求を排斥したのは、結局正当として是認すべきものである。
論旨第二点 末段および同第六点は、要するに本件請求に確認の利益があると主張するのであるが、前記説明に照らしその理由なきことは明白であり、所論(第二点末段)引用にかかる判例は、本件に適切でない。
論旨第三点 (2)、同第四、第五、第七、第八点においては、以上説明のとおりすでに本件請求が確認の利益を欠き排斥を免れないものである以上、所論はいずれも原判決の主文に影響のないことが明白であるから結局、すべて採用に値しない。
その他の論旨は違憲をいう点もあるが、いずれも単なる法令違背の主張を出でないのであつてすべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号ないし三号のいずれにも該当せず、また同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官の全員一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎)